■新☆仏蘭西黒魔導師 原本小説 3 


多少、ボイスドラマと設定が違う箇所がございますが、ご了承ください。


 
「ゔっ、私は一体…ここはどこだ?私はだーれなんだー??」
 …完璧に混乱しているようだ。しかしまぁ無理もない。彼は気づいたら海岸に倒れていたのだから。
「そうか!きっとこれは移動魔法リベカ!!いやはや練習してもいないのに使えるようになるとは、やはり私は天才だ!わーっはっはっはっは…ん?」
 彼の足元に一匹のウニがいた。
「ウ、ウシも食べたいけど…うっウニも食いてぇーっっ!!」
 彼は叫んでウニをよりによって『素手』でつかんだ!それもおもいっきり……。

ぷすっ…

ギィヤァァーッッ!!


 凄まじい叫び声をあげてあまりの痛さに耐えきれず彼は走りまわった。もちろん目の前など見てはいない。だから、今自分がマッハしている方向がまっすぐ海に向かっていることなど気づくはずもない。
 …ちょうどその頃、こんなバカの一人騒ぎよりももっと大変な騒ぎが(ミドリムシとエベレスト山の違いくらい)起こっていた。エジプトから逃れてきたヘブライ人の人々が目の前を海にふさがれ、しかも後ろからはエジプト軍が!まさに袋の鼠である。もはやこれまでか…。
「皆!まだあきらめるな!」
 一人の男が叫んだ。モーセである。彼は手を天にかざし、呪文を唱えた。すると…どこからともなく叫び声とも思えるようなとうてい異常な音を立てて、一陣の風が(走ってきて)海を引き裂いた!こうして、無事ヘブライ人はエジプトから逃れることができたので
ある。…オッドでも他人のお役に立てたようだ。
一気に352kmも爆走したので、さすがのオッドも息を切らしている。彼は砂漠のオアシスで一息つこうとしている。
「全く、…畜生なウニだ…ハァ、ハァ…この私に…!」
 崖から落ちて普通なら即死のような状況に陥ってもピンピンしているくせに、ウニが指先に刺さって352kmも爆走するとは非常識な奴である。食べて、飛んで、落ちて、ワープして、爆走して、彼も疲れたようだ。352km走り終わった地点で目をつむって立ったまま眠りについた。




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 気がつくとオッドはとある建物の一室にいた。その建物は木造で、部屋の真ん中に異常に急な階段のようなものがある。オッドが住んでいた地域とは明らかに違うものであった。
「なんじゃ、ここは…??んっ?あの真ん中にあるのはなんだろ…??オッド、わんぱくだから行っちゃうぞ✯」
わけのわからない事を言いながら、オッドは急な階段を上り始めた。そして…
「んっ?何か上にも部屋が…!?」

ずるっガン!ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガドカン!!


(オッドがすべって、ぶつけて、落ちて、壁に直撃した音)


「ゔーいってぇぇー。くそう、階段めっ!私の美しい顔に傷が…あっ!たんこぶがー!」
 オッドがぶつぶつ言っていると、
「何事か!?」
 と一人の武士がオッドの所へ走ってきた。
「ムッ、怪しい奴!名を申せ!」
「むっ、その黒い頭といい、そのヘンテコなヘアスタイルといい、そのわけのわからん服といい、その変な棒といい、キサマ、悪魔の使いだな!?よし、この神の使い、オッド=スチューピッド様がやっつけてくれるわ!!」
オッドはこぶを叩いて引っ込めながら立ち上がった。
くせものだー!であぇであぇー!!」
「私は
【臭く】なんかないぞ!失礼な!!」
 オッドがくだらないことを言っているうちに、どんどんと武士が集まってきた。
「あ゛っ!きさまら!!団体で一人を攻撃とは卑怯なっっ!!あっ…ウソです許してぎゃあー!」
 武士が変な棒(刀)を振り回し追いかけてきた。必死で逃げ回るオッド。ふと彼の視界に壁の穴が入った。
「くそぅ!こうなったら…とうっっ!!」
 オッドはその穴に飛び込んだ!



 ひゅボチャ~ン

 
 …そう、もちろんのごとく下は堀だったのだ。
ぶくぶくぶくぶくぶく………
(忘れていた。私は泳げないと言う事を)
 ちょうどその時、城の姫が堀の周りを散歩していた。
「あらっ?」
 ふと水中を覗くと一人の男がもがいている。
 プクプク…… プク……ゴポッ………………………………。
「た、大変!誰か来て!」
 近くから遠くからたくさんの家来がやって来た。
「どうなされましたか、姫。」
「人が…。」
 下を見て指さす。
「吾輩が助けよう。」
 ボシャーンと飛び降り、助けた。オッドはむせている。
「城に運んで服を変えてあげなさい。」
「おい、姫様が言ったから助けたが…こいつさっき城に侵入した奴だろ?いいのかなあ?」
「気にするな…。」
 二人の家来はオッドに着物を着せた。帽子も取ろうとしたがどうしてもはずれなかった。
「う…ん」
 オッドが起きた。
「うぬぬ!なんじゃこりゃぁ!さてはサタン!(家来に向かって)お前、この私を黒ミサカタコンベに送るつもりなのだろう!それは許さんぞ。私は不死身なのだ!ア~ンデーッド!!」
「……?」(家来)
 冗談のつもりで言うオッドだが、どうも冗談に聞こえない。
 オッドは服が乾いたら出られるよう、準備しよう…とも思ったが準備することなどないのでその場でゴロゴロしていた。
「そうだ。おぬし、名を何と申す?」
「ナヲナントモース?何だそりゃ?ひゃひゃひゃー、変な奴―!それよりサタン、私はハラペコなのだ。ランチを用意してくれたまえ。それと食後のお茶は、スリランカのスリジャヤワルダナプラコッテ産のティーだ。わかったかな?」
「す…理事や悪だな天婦羅こった?」
「ぶぅわははは!バカめ、まぁ良い。とにかく飯を持って来い。」
(図々しい)サタン達はそう思いながらも食事を運ぶ。
「我が城の名物“ふなずし”でございます。」
(このふなずしは30年程漬けたもの。食べ慣れないものが食べれば食中毒を起こすじゃろう。ふふふ。)
 鼻をつくような刺激臭、見た目も決してキレイではない。
「フフゥン~スウィ~トかつサワ~なこの香り!納豆ヨーグルトサラダの次に!」
 パクリ。一口で平らげた。
「うめぇ~っ!!はぁ~、いいねぇ!サタンくん!」
「佐藤です。」
 さんざん食べたオッド。服ももう乾いたようなので着替え、あとは土産としてふなずし一年分もらっておこうと企んでいる。<ふなずし倉庫>と書かれた蔵があったため、簡単にふなずしを探すことができた。
「このごろ私が気付くと知らないうちに違う場所にいる。だから今回はふなずしと一緒に移動!ってことだ。」
 がしっ!っとふなずしの入った樽をつかんだまま、眠くなったので眠りに入る。





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「ほ…本当にふなずしを持って移動できたぜ~!!ここは…?」
(見渡すかぎりの緑…そこに散らばる白いふわふわ。空は青く、雲は綿飴のようだ。)←オッドの視線
 ここはポリルア市。ニュージーランド、首都ウェリントンにごく近い美しい町。ちなみに作者の住んでいる市の姉妹都市だ。
「こ、この動物は、羊さん?♪メーリさんのひっつっじーひっつっじーひっつっじーメーリさんのひっつっじーかっわいーなー。」
 オッドは“オオカミと羊飼い”の話を思い出した。
(たしか少年が〈オオカミだぞー!〉って叫ぶのだったよな。ほほぅ、おもしろそうだなぁ。私がその少年役だ。私は美少年だから主役にぴったりなのだ。そして叫ぶと皆の信頼を嘗て勇者となるのだ!)

おぅ~い オオカミだぞ~!


「なにっ!?」
 近い(といってもNZだから2kmくらいだが)所にいたリズライおじさんと、犬のターキイが来た。
「うーばうわう!!」
「なんだ、オオカミなんていないじゃないか。おまえさん、オオカミ見なかったか?」
「お…オオカミ?今叫んだのは私だが。一度叫んでみたかったのだ。」
「何やってんだよ。言っとくけどな、ポリルアにはオオカミが出たことなんてないんだ。
もし本当だったら俺が捕まえて賞をもらおうと思ったが…。俺は北島一の珍しいものハンターさ。おまえさんはこんな夏にそんな変な服を厚着してなにやってんだ?」
「何やってるんだろう…私にもわからん。ちょっと叫んでみたかっただけだ。」
「何だかおもしろい奴だなぁ、おまえさん。よし!気に入った。俺の家にきな。」

 オッドはラム肉をいただいてごきげんだ。
「おまえさん、名前は?」
「オッド=スチューピッド様だ。」
「はっ?オッド=スチューピッドォ~?本当かよ、それ、うちの言葉にすると“変なたわけもの”って意味だぞ…ププッ!」
「笑うなー!うそだ、私は神の使いだぞっ!!」
「それは“ゴット=キューピット”だろ。」


ガーンでも、私はフランス人だから…フランスではオッド=スチューピッドって言うかもしれないし…。」
「んなわけないだろ。」


「わぅ~ん。」
 ターキイにしか同情されないオッド。でも彼は海より落ち込んでも10秒経ってしまえば天より上まで立ち直る。
「私の言葉では“オッド=スチューピッドは神の使い”となるのだーっはっはっはっは!!」
「開き直りが早い奴だな。ところでおまえさん、背中にさっきから何背負っているんだ?」
「ふふっ、これか?私の食料バックパックなのだ。昨日サタンにもらったのだ。お前と犬はいい奴だから一匹ずつやる。ほれ。」
 …とフタを開けた瞬間、


ぷぅ~ん


「な、何だこの臭いは!!!お…おい!ターキイ!大丈夫か?!オッド!俺に恨みでもあるのか!」
「まあまま、うれしいのは分かるがそんなに大声を出さなくてもいいぞ。」
 オッドは樽の中からを一匹取り出してリズライおじさんに渡そうとしたが、おじさんはあまりの臭さに家の外に逃げるように飛び出してしまった。
「そうかぁ…♥あまりのうれしさに私の顔を見るのが恥ずかしいのだな。…仕方ない、これを机の上において…と。あー、何だか肩がこったなぁ。さすがに樽を背負っているのはツライか…。少々一休みさせてもらおうかな。」
 オッドは横になった。
「あっ、いかんいかん。樽背負ってから寝ないとこいつが食べられなくなってしまう。」
 ということで樽と一緒に横になった。そしてオッドは今まで通りワープした。

オッドがいなくなって少し経過して、リズライおじさんが戻ってきた。
「あ~、やっと落ち着いた…。」
 そしておじさんはドアを開けた。一歩足を家に踏み入れたその時、


ぷぅ~ん


「ぎぇー!まだ臭うじゃないかー!!」
 部屋の中を見たらなんと、床の下にフナとフナが入っていた樽の中の液体(ねちゃねちゃしたもの)が所々こぼれているではないか!
うぁー!!なんてことだぁー!」
 それは当たり前だ。オッドがふたをしないで樽を横にしたのだから。(一緒に寝た)…ということは、今彼が持っている樽はずいぶん軽くなっているだろう。
「あいつめ、一体何のうらみが…そうだ!ターキイ!!」
 おじさんはターキイを探した。
「ああ…!ターキイ!大丈夫か?!……ゲホ、ゲホ。い、いったん外に………。」
 ターキイは人間の200倍の嗅覚の持ち主なので、意識を失って痙攣していた。死んでしまったと思っておじさんはターキイを埋葬してしまったところ、土の中から苦しくなったターキイが息をみだして出てきたのであった。 
 何はともあれ、リズライおじさんにとって忘れることのない日となったことだろう。





★。、:*:。.:*:・'゜☆。.:*:★。、:*:。.:*:・'゜☆。.:*



「ん~、よく寝たぜ!最・高♥」
 そしてオッドは辺りを見た。
「ん??ここはどこだ?…………ま、どーでもいいか。ふなずしもちゃんとあることだし、なにはともあれ…おっ??」
彼が足元を見たところ、何百人、という人が傷ついて倒れていた。
「な、なんだ?!こいつらは!…はっ!おいっ!私は枕ではないぞ!!利用するな!!私は超美的で実は繊細なオッド=スチューピッド様だぞ!!」
 倒れている人たちに向かって言った。しかし…起きたらすぐにこの光景が目に飛び込んでくると思うが、すぐに気づかなかったことはさすが、オッドだ…。そこへ、叫び声が聞こえた。


「エトルリア人!王政の時代は終わったのだ!即座にローマから立ち去れぃ!!」


 オッドは声が聞こえたほうに顔をむけた。
「なんだ????なんだ???」
さらに声が聞こえた。
「我々の勝利だ!これからは共和制政の時代だ。」
「やっとエトルリア人を追い払えましたね。」
「これで俺たちは自由に政治ができる、フフ。」
「なぁ、あそこに1人いるんだが…。」
 1人の人がオッドを指した。
「…なんだ?あいつは?」
「変な格好してるよな!あはは!バカ丸出しだな!」
「センスないって感じがするよ!」
「おろかな奴ですね、見たところ何もできなさそうですね。無能。」
「バカだ、バカ!!」
 その言葉を聞いたオッドは、超高速スピードで彼らに近寄った。


ぬぁ~んだと~!!おい!お前達!!この私をバカやら無能やらへっぴり腰やらなんやらかんやら言ったな~!!もう一回言ってみろ~!」


「うぁ!何だ!お前!
「うげっ!何だこの臭いは!?
「腐ってる!!!お前!?
「気持ち悪い!?



!!



 オッドが近寄ったところ、オッドの持っているふなずしの匂いがそうとう臭かったのだろうか、彼らは逃げ出した。
「お、おい!!お前ら!どこへ行くのだ!?まだ私の『感動的なジュテームなお話タイムパート2★☆』は終わっていないのだぞ!!」
 そんなことは気にしないでさっさと逃げてしまった。そしてオッドは取り残された。
「まったく、近頃のおじさん達は、何を考えているのかわからん。」
 そしてオッドは持っていたふなずしの樽を見た。
「よし、朝食にするか~。ん~今日の料理は~、『ふなずしの天日干し!』ってのいいかも!よし!思い立ったが最後!ふなずしを干そう!」
 ふなずしを干しはじめた。樽の中にあったものをすべて干した。…そう、すべて。
「う~っし、これでちょっと待てばできあがり!それにしても皆こんなにいい天気なのにいつまで寝てるのか。」
 倒れている人を見てつぶやいた。
「たしかにぽかぽかして、…眠くなってくるな…。…あ、いかん、眠くなってきた。」
 お日様に照らされてぽかぽかしてきたのが理由だろう。彼は結構な睡魔に襲われた。
「ふぁ~、お昼ねしよ~っと、…ぐうー。」
 数秒で眠りに入ったオッド。もう、これは特技のうちに入る気がする…。そして彼の姿はそこから消えた。

ふなずしを置いて。




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