■新☆仏蘭西黒魔導師 原本小説 番外編2 

Title:【三人の恋話


多少、ボイスドラマと設定が違う箇所がございますが、ご了承ください。


 

** 注意 **
このお話には、ボイスドラマには反映されていない設定が含まれて居ます。
 1、ネシェノがユークリッドのことを好き。
 2、ネシェノはユークリッドと一回だけ会ったことがある。

この設定を反映させるための物語は、原本にあります。
(が、まだプロット打ちをしておりませんのでノートにのみ存在。+東大郷を去った後に記した話なので、支局長以外、内容を知りません)


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 修行を始めて7ヶ月くらい経った頃…

 ドイツの館から少し離れた(歩いて20分)平地。よく修行場として使用しているところだ。そこにネシェノとヴィクトールはいた。…ルテティアはいない。

「…だから、わかってますよ!!時代を越えた恋なんて許されるわけがないって。」
「わかっているなら、お前の心はどうしてユークリッドへの思いが強まっているのだ?」
 よくわからない人のために説明しよう。ネシェノはユークリッドに恋をしてしまったのである。
「……あたしにだってわからないよ。いけないって本当にわかってる、わかってる。でも…でも……。」
「でも、何だ?」
「…仕方がないよ。気になって仕方がない…だから頭の中で考えるとさらに……。はぁ。」
 ため息をつくネシェノ。それを見てヴィクトールは言う。
「…それに、ユークリッドを落とすことは難しいぞ。アイツはなぁ…とにかく鈍いからなぁ、叶わない可能性が高いぞ。…ネシェノ、悪いことは言わない、早めにその気持ちを抑えることを勧めるよ。まぁ、私も少し違うが、叶わない恋というものを今体験中だから、あまり強くは言えないが…。辛いぞ、結構。私の天使はすぐ側にふよふよと漂っているのに、捕まえることは許されないのだ。兄として…それは禁じられた行為なのだから…。」
「師匠……。」
 ティアのことしか頭にないと思っているヴィクトールが、実は辛い思いをしているとわかった。ヴィクトールはネシェノに、自分と同じく辛い思いをさせたくないと思った上でこのように言っているんだと理解したネシェノ。
実は全く違うのだが…ネシェノは気付いていない。
「だから、私はティアのことを愛することにしたのだ。兄としての愛で。ティアをやさしく、そして心を込めて包む…。天使を自由に泳がせておき、変なめざとい虫が寄って来たらそれをたたき落とす!!バシッッッとな。ティアの身を守るためなら、私は何でもするのさ…あぁ、ティア…愛してるよ、兄として!!」
 片手を空にかざし、もう片方は胸にあて、浮かれはじめるヴィクトール。
「……よくわからないけど、何かが違う気がするのは…気のせいかなぁ。」
 ぼそっと呟くネシェノ。
「違うくなんかないぞ。兄として妹を愛することの辛さ…胸がいくつあっても足りないくらいだ。」
「………。」
 いつものことながら、呆れて言葉を失うネシェノ。
「だから、ネシェノ。何度も言うように、ユークリッドはやめておくんだ。」
「あの、師匠。…つながりが…全然わからないんですけどぉ…。」
「何!?やはりわからないか。経験しなければ理解できないのだろうなぁ…人間とはそういうものだからな…。まぁ、私もするなとは言わない。忠告しているだけだからな。わかったか!?」
「はじめからわかってますよ。」
「…まぁ、抑えようとして抑えることは逆効果かもしれん。よく考えるのだよ。」
「はい…。あ、師匠。…一応恥ずかしいから、ルテティアには内緒にしといてくださいね。」
「仕方がないな。心に留めておくよ。」
「あたしだって師匠のことをルテティアに黙っているんだから、絶対に言わないでくださいよ!!」
「わかっているさ。そんなにお前は師匠の私を信じられないのかい?」
「…そういうわけじゃないけど、実際微妙だからなぁ…。」
「何か言ったか?」
「いえ、別に…。」
「ならいい。そうだ、ネシェノ、ついでだから写真のプリントを頼みたいのだが。」
「…師匠。どうして自分でカメラのデータを取り出せるくせに、あたしに手間のかかる現像を頼むのですかー。」
 カメラ屋の娘であるネシェノに、ヴィクトールはよく最新式デジタルカメラで撮ったルテティアの写真の現像を頼んでいるのだ。
「何でも魔法でやってしまっては面白くないだろ?せっかくこの館のお前の部屋の奥に、お前の時代の現像機器(ってあるの?)、しかもお前の家で使い慣れているものを置いたんだ。それを活用しなくてどうするんだ?」
「……じゃあ師匠が自分で現像すればいいじゃないですか。」
「それでは面白くないではないか。誰かに頼んで、できあがった写真を受け取る時のドキドキ感…。それを味わいたいんだよ。わかるだろぅ?」
「わかりません。…そんなにドキドキするものですか??逆に私だったら恥ずかしくて自分でやるよ。」
「するさぁ。……写真が出来上がるのを待つ長い時間…その長い時間を経験してめぐり合う、一枚のティア……。あぁ、なんてすばらしいんだ!!この時の気分と言ったら…。言葉に表すことのできない感情が…。」
「………………(長いか?1分以内でできるのに…」。」
 しばらくの間そんなような話をするヴィクトール。やはり呆れてしまうネシェノ。
「わかりました、わかりましたから!!」
「よし、では頼むぞ。」
「…はい。サイズは、普通でいいですね?引き伸ばししたい写真とかあります?あと、装飾は?」
「そうだな…。」

 ヴィクトールは大きいサイズにプリントしたい写真や装飾を施したい写真を選んだ。

「はい、わかりました、…っと。すぐじゃなくていいですよね。」
「あぁ、できるだけ早めがいいが…待つ時間もほしいからな。適度な時間をおいて私に渡してくれ。」
「はいぃ。」

 ヴィクトールが指定した写真をメモっていたネシェノ。その間にヴィクトールはドイツの館に続く道を歩き始めていた。


「あ、……ちょっ!師匠!待ってください!」

 ネシェノはヴィクトールを追っていった。

とそこへ…ルテティアがヴィクトールのところへやってきた!なぜか慌てて、ネシェノは樹の陰に隠れる。

「御兄様!」
「ティ、ティア!どうしてここへ!一人で出歩いていては危ないじゃないか。
「もしお前に危ない人(←あなたですってば(←師匠のことです:byネシェノ))が近づいてきたらどうするんだ。さぁ私がすぐに家に送ってやるから行きなさい。何故来たんだ?」
「最近御兄様ってネシェノさんとばっかり話してるんですもの…。それに私が来るとすぐどこかへ行かれるじゃないですか。寂しいわ…。」
「すまんティア、でもネシェノとはなんでもないんだよ」
「うそばっかり…。きっと御兄様はネシェノさんに恋をしていらっしゃるのね?きっと、きっとそうだわ!」
「ちぃがぁう~~~!!!断じて違うぞティア!!!!」
「きゃっ!!…じゃあ御兄様、誰か好きな方、いらっしゃるの??」
「す、、、好きな人は、、、いるぞ。言わないけどな。」
「まぁ☆彡わたくし、御兄様なら誰でもイチコロだと思いますの!御兄様に好かれる人は絶対幸せですわ!」
「いや、私にだって落とせない女はいるのだ……。もういい。ティア、一緒に帰ろう」
「御兄様の恋愛話、もっと聞きたいですわ!」
「だめだ!だーめーだ!行くぞ!!!」

 -ピシュン-


「……(笑)」
 ネシェノはその様子を見て笑みを浮かべていた。
「師匠の好きな人ねぇ…(笑)さて、アタシも帰ろ~。」




⇒ドイツの館

「御兄様、どうして教えてくれないのです??最近一度も御兄様の恋愛話聞いたことありませんのに。」
 ティアは兄の恋愛話が聞きたくて仕方がないようだ。ティアももうお年頃。恋愛話には興味津々なのです。

「(困った。過去のことは言いたくないし、現在のことを言うわけにもいかないし…)どうしても駄目だ。」
「…まさか、御兄様…。」
「(ドキィ!)」

「恋愛したことないのですか!?」

「そんなことはないぞ。ただ…。」
「ただ?何ですか?」
「ただ…。良い思い出ではなかったからな、思い出したくないだけなのだよ。」
「あ、……ご、ごめんなさい。私、いけないことを聞いていらしったのですね。ごめんなさい!!」
「いや。(よし、上手くごまかせた!)」

「ティア、ところでお前は恋愛しているのか?」
「…私ですか?私、今恋愛はできませんわ。兄様を元に戻すことが一番大事なのですから。」
「(よし。それでいいんだぞ、ティア。)そうか、そうだな。まずはユークリッドの救出が先だな。」
「もちろんですわ。私のせいで…兄様が大変なことになってしまったのですから。」
 少しうつむくティア。それを見てヴィクトールは心が少し痛む。
「(ティア…そんなに落ち込まないでくれ。私が…何とか。…いや、駄目だ。それではティアは成長できない。)ティア、頑張るのだよ。」
「もちろんですわ!!…ところで御兄様…。」

 とここでネシェノが帰宅。ネシェノは思い出したように、ヴィクトールにたてつく。

「あぁ、そうだ!師匠ぉ!!ルテティアにさっきのこと言ってないでしょうね!!」
「あぁ、ネシェノさん。」
「言うとは、何をだ?」
「何をって…さっきのあの、はじめのほうの…!!」
「あぁ。…言っていないよ。」
「ほっ…。」
「何だ、そんなに言ってほしいのか?」
「え、何です??御兄様、何のお話ですか?」
「ティア、実はネシェノはな……。」
「はい…。」

「あ゛ーーー!!ちょ、やめてくださいぃ!!」

 

ばたん!



 今いた部屋からティアを押し出したネシェノ。
「おい!かわいい妹に乱暴するなよ。ティアはなぁ、私のおかげで生まれてこのかた一度も転んだこともないんだぞ。アァ、私はなんていいお兄さんなんだろう…ティアには他の男に挨拶のキッスさえさせないよぉ~~♪」
「師匠……。」

-キィ。-

「あのう、、、」
ドアをちょっとあけて顔を出すティア。
「!!! ティアか、すまんな。ネシェノがお前を部屋から追い出してしまって…」

(すぐ人のせいにするんだから) ←ネシェノの心の中

「やっぱり御兄様はネシェノさんのこと好きでしたのね★さっきドアごしにちょっと聞こえたんですけど『他の男にキッスさえさせない』って聞いちゃいましたわよ♪ラブラブでしたのね~♪」
「ティ、ティア、この際だから言ってしまうよ!!?よく聞いていなさい!兄さんの好きなのはね、この宇宙で一番チャーミングで、けなげで花のように舞い、声は朝露のように新鮮で、仕草はまるで瞬くステラ・・・そう、それは・・・

 シュビッ!!!!!!!!!!

「…イ…イリアス!!」


 ヴィクトールはさっきまでいた部屋とは違う、何とも不思議な空間にいた。そこは許された者のみが入ることの出来る、「神」の空間。ヴィクトールはイリアスに呼ばれたのだ。

 そしてそこにいたイリアスが話し始める。

「ヴィクトール、仕事です。(にこにこ)」
「(頭をかかえるヴィクさん)……はぁ。」

 実はこの呼び出されパターンは何度目かわからない。ヴィクさんがティアに対してあのことを言おうとすると直ぐにこうなるのです。(笑)
 だからいつまで経っても自分の気持ちを伝えられないのだ。というか伝えるべきでではないとイリアス達は判断しているためこうやって防いでしまうみたいです。

「どうかしたのですか?」
「…いや。別に。」

 ヴィクトールを見ながら意味ありげな笑みをずっとしているイリアス。

「で、今度は何があったのだ、イリアス。」
「……行ってみればわかります。」
「全く…。」

 イリアスは少し間をあけ、ヴィクトールの名を「ゆっくり」呼んだ。

「……ヴィクト~ル。」

「……………………了解。。。。」

 ヴィクトールはイリアスに言われた通りの場所へ向かった。


 一方その頃、急にヴィクトールがその場から消えたため、少しばかりティアとネシェノは唖然としてしまった。
「…御兄様??またどこかへ…。しかもお話の途中ですわ。」
「あ…ルテティア、たぶんね、師匠は急な仕事に向かったんだと思うよ(そう、たぶん)。」
「…仕事?御兄様は何かお仕事していらしったのですね…私知りませんでしたわ。それにしても、あまりにも急すぎますわ。」

 二人の間に一瞬沈黙が走る…。

「ネシェノさん。御兄様は何のお仕事していらっしゃっるか、ご存知なのでしょう?教えていただけません?」
「え゛…。」

 一歩引くネシェノ。

「実は…あたしもよく知らないの(汗)」
「嘘ですわ。ネシェノさん、御兄様とあんなにラブラブですのに…知らないはずがありませんわ。」
「ルテティアー!!あたしは師匠とそんな関係じゃないから!!ほーーんとーに!勘違いしないでー!!あたしだって、好きな人…くらい………い…(汗)。」

 頬が赤くなるネシェノ。

「まぁ!!そうなのですね!!そういえばネシェノさんの恋話は聞いたことありませんわ。今、好きな人がいるとおっしゃいましたよね?その人、どんな方なんです?」
 焦ってしまっているため、言葉にならないネシェノ。
「…あ、あの、その…。」
 そんなことお構いなしに、ルテティアは目を光らせてさらにネシェノに質問する。
「年は同じなんですの?どこでお知り合いになった方なんです?」
「あの、その…。えーっと…。」
 つぶらな瞳を輝かせ、じーっとネシェノの返答を待つルテティア。
「…と、年は…いくつか下(なはず)。」
「年下なんですね!?性格は?」
「…性格。穏やか…かな(だよね…)。」
「それだけですの?他には?」
「あ、あのね、ルテティア…あたしその人と直接会ったことは一回しかないんだよ…だから実は詳しく知らないの…。」
「まぁ!!それはいわゆる「ヒトメボレ」というものですわね!」
「…遠くから(師匠に映像で何度か見せてもらっただけなんだけどねぇ)見ることは何度かあったから、一目惚れっていうのかなぁ…。」
「そうですわね。遠くから見る人に恋…何だか一種のあこがれから始まった恋みたいですわ。このネシェノさんの恋が叶うといいですわね♪私、応援していますわ!」
「……あ、ありがとう。……あ!ち、ちなみにルテティアはどうなの…?」
 やっとの思いで話を自分からルテティアにもっていこうとするネシェノ。
「私は、今好きな人はいませんわ。ユークリッド兄様をもとに戻すまではそんなことしている暇はありませんの。」
「…そっか。。。」
「全てが終わったら、私もネシェノさんみたいに恋がしたいですわ。」
「…ルテティアならきっとすぐできるよ。」
「あら、そうかしら。」
「そうだよ~。(師匠が許さないと思うけどね~。)」
「頑張るわ、ありがとう。」


 と、この会話を、帰宅してきたヴィクトールが柱の影から眼を光らせながら聞いていた。
「ネシェノめ…私の大事なティアを他の男とくっつけさせるつもりか!?」
 落ち着きが少しずつなくなるヴィクトール。しかし、自分に「大丈夫だ」と言い聞かせ、落ち着きを取り戻す。
「ふっ、何もあせることはない。私がいる限り、誰にもティアは渡さないのだから。ティアは私のものだ…。」
 ヴィクトールは何も知らないふりをして、ルテティアとネシェノの前に、軽やかなステップで登場した。
「あ、御兄様。」
「やぁ、ティア。さっきは突然いなくなってしまってすまなかった。急な用事を思い出してな、どうしても行かなければいけなかったのだよ。ティア、許してくれるかい?」
 さわやかな表情で話すヴィクトール。
「そうだったのですね。謝ることではありませんわよ、御兄様。」
「(ルテティア…、よく納得できるねぇ…。かなり鈍いよ…。だからルテティアに対する師匠の異常な行動にも気付かないのね…。この…いかにも何か企んでいそうな師匠の表情も…。)」
「ありがとう、ティア。」
「いえ、とんでもないですわ。」
「ところでティア、この前私が出した研究課題は進んでいるかい?」
「ええ、半分くらいいきましたわ。」
「そうか、その調子で早くその課題を終わらせるんだよ。終わったら今度、どこか行きたい所へ連れて行ってあげよう。」
「本当ですの!?では、頑張って早く終わらせますわ。」
「……はいはい、いってらっしゃい。」
「ネシェノさんも一緒に行きましょうよ。」
 ルテティアのその言葉を聞いてすぐ、ネシェノはヴィクトールの顔を見た。
「…………やめとくわ。兄妹水入らずで行ってきな。あたし、一人で好きなことしてるわ。」
「そう?残念ですわ。」
「また、ね。(師匠…そんな、来るなって顔しなくても…。)」
「じゃあ、早速少しでも研究を進めなければいけませんわね。御兄様、ネシェノさん、私研究の続きをやりに行きますわ。」
「うん。いってらっしゃい。」
「ティア、頑張れ。」
「はい。」

 ルテティアは研究の続きを行いに部屋へと駆けていった。

残った二人は…というと。

 ルテティアが見えなくなるまで一言もしゃべらずに立っていた。

 はじめに口を開いたのはヴィクトールだ。この時彼は、とても真面目な表情をしていた。
「ネシェノ。話がある。」
「…何ですか?」
 ネシェノも真面目に返答をする。
 ヴィクトールとネシェノは、リベカでルテティアが知らない、ルテティア関係のものが沢山置いてあるヴィクトールの隠し部屋へ移動した。
「で、何でしょう?」
 ネシェノはヴィクトールに聞く。
「……お前、私のティアへの思いを知った上で、他の虫けらとティアをくっつけさせるつもりか!?」
「!?」
 ネシェノは驚く。
「師匠!さっきの会話聞いていたのですか!?」
「あぁ、そうだ。」
「…あ“-。え”-っと…。そういうつもりじゃないんだけど…。」
「いいか、ティアは私のものだ。他の男と付き合うようなことは100%ありえないのだ!」
「……。」
「わかったか!」
「わかってます、わかってますよ!(ちょっと怒り気味)そんな、本気で言ってないですから。あたしはティアが恋愛したいって言ったから、『きっとできる』って言っただけですよ!何も誰と恋愛できるとは言ってないじゃないですか。」
「まぁ、いいだろう。とにかく、今度ティアに余計なことを吹き込んだら、罰を与えるからな。」
「罰!?」
「あぁ、その時にどんな罰をあたえるか考えるから…覚悟しておくんだ。」
「…………。」

 このように、ヴィクトールのティアloveな日々が、もうしばらく続くのであった。


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